簡単解説!ハーレーのエンジンの種類と見分け方【一目でわかる基本編】

クルマのこと

アメリカンバイクといったら一番に名の上がる「ハーレーダビッドソン」。日本にはないスタイルやエンジンなどで、世界中で愛されるバイクメーカーです。

今回はそんなハーレーに搭載されている主要なエンジンの種類の見分け方を、急ごしらえの適当な図で解説していきます。

ハーレーダビッドソンの歴史

ハーレーダビッドソン(以下ハーレー)は1903年に設立されたアメリカ合衆国のバイクメーカーです。116㏄の小型単気筒エンジンから始まったバイク開発、1907年には最初のVツインモデルが発表され、単気筒モデルよりも倍近い出力を誇ったことで生産台数も飛躍的に伸びました。

ハーレーダビッドソン HT 1000㏄
By Lars-Göran Lindgren Sweden
ハーレーダビッドソン 1000㏄ HT 1916年

その後、WW1では多数の車両を軍に提供。世界恐慌中においても”ナックルヘッド”搭載モデルを発表しました。
さらにWW2が続きますが、ここでも軍から多くの注文が舞い込み、WLシリーズの軍用バージョンであるWLAを製造しました。

1970年代ころは、AMF(アメリカン・マシン・アンド・ファウンドリー)の買収で始まった人員整理によるストライキの多発により品質が低下。ハンドリングや性能、製品品質などの面で日本製バイクに劣り、「”Hardly Ableson”」、「”Hardly Driveable”」、「”Hogly Ferguson”」と揶揄され、「”Hog”(豚)」は軽蔑的なあだ名となってしまいました。

しかし1981年にAMFがハーレーを売却したことで、生産が厳しく管理し始めます。最新のバイクと競うことをやめ、ハーレーならではのレトロな味わいを利用。
1990年に発売された”ファットボーイ”が大ヒットしたことで再びハーレーの名が世界に響き渡りました。

ハーレーダビッドソンの特徴

ハーレーの特徴は何といっても、大排気量OHVのVツインエンジンでしょう。悪く言ってしまえば古くさいエンジン。しかし、そのエンジンがもたらすトルクフルな乗り味と独特の鼓動感、そこからくる美しいフォルムに見せられるファンが多くいるのです。

高性能なバイクが次々に発売される中、ハーレーは今もなおOHVを採用し続け、大排気量化と個性によって他社を押しのけてきました。

近年の排気ガス蹴生を受け、インジェクション化や触媒の設置、音量や振動も抑えられる世になってきましたが、それでもハーレーはハーレーらしく我が道を行くバイクメーカーです。

エンジンの見分け方

長くなりましたがここからが本題です。1936年から一貫してOHVのVツインエンジンを採用してきたハーレーは、一見同じように見えて年代ごとに特徴があります。

そのエンジンの相性、見分け方を知ればよりハーレーを楽しむことができるはずです!

フラットヘッド(1930~1935)

OHV(オーバーヘッドバルブ、空気を燃焼室内に取り入れるための入り口がブロックの上についている)が採用されるナックルヘッド以降とは異なり、1930年に登場したこの”フラットヘッド”はサイドバルブが採用されています。カムが直接バルブを押し上げるという、OHVすら複雑と思えるほどシンプルな構造。

したがってこのシリンダーヘッドはただの蓋となっており、パかっと開けると、ピストンとバルブが平らに並んでいるのです。
ヘッド部分は冷却のたものふぃんが目立つようなデザインで、外から見てもこれ以降のエンジンとは明らかに違うので簡単に見分けがつくでしょう。

ナックルヘッド(1936~1947)

サイドバルブだったフラットヘッドの次、1936年に登場したこのエンジンは、ハーレーで初めてOHVが採用されたモデルです。
エンジン腰下にあるカム(黒)の動きを、プッシュロッド(黄色)を介してロッカーアーム(緑)に伝え、バルブ(青)を駆動します。

バルブがヘッドに移動したことでヘッドが大型化、バルブカバー(ロッカーボックス)の形状が特徴的になりました。
そしてその形が握りこぶしに似ていることから”ナックルヘッド”と呼ばれています。

ナックルヘッド

パンヘッド(1948~1965)

ハーレー初のOHVエンジンとなったナックルヘッド。最高速度が150㎞を超える高性能なエンジンでしたが、バルブカバーが完全に覆われておらずオイル漏れが多発。さらに、オイルがエンジン上部に運ばれなかったり、メカノイズが大きかったりしました。

そこで、”パンヘッド”ではバルブカバーをしっかり密閉できるような構造に。カバーからナットが無くなったことでシンプルな見た目となり、鍋をひっくり返したような見た目となりました。

また、オイルポンプが改良されたほか、シリンダーヘッドがアルミ製となり耐久性・耐熱性・放熱性が向上し、さらなる高性能化を目指せるようになりました。

パンヘッド

ショベルヘッド(1966~1984)

ハーレーOHVの第3世代にあたる”ショベルヘッド”。整備性、耐久性、生産性の向上を目指して登場。バルブカバーはナックルヘッドのようにロッカーアーム固定式に戻ったものの、ロッカー周りがものコック構造となりシンプルな見た目になりました。

1970年には発電機が直流から交流に進化。オルタネーターショベルと呼ばれたりする由来です。これによりセルスターター搭載車でも安定して発電・充電が可能になりました。

見分けるポイントとしては、ショベルのような見た目…ですがそのショベルにも人によっていろいろあるようで、上から見るとショベルのよう。
個人的には、ショベルカーの曲線、もしくは石油採掘機にそっくりだと思うので、それをイメージしてみてはどうでしょうか。

この美しい造形と強烈な鼓動感は、他社はもちろんハーレーの中でもトップレベル。今もなお多くの人に愛されているエンジンです。

ショベルヘッド

エボリューション(1984~1999)

今でこそ多くのファンがいるショベルヘッドでしたが発売していた時期は、ホンダやトライアンフのような高性能バイクが市場の人気を得ていました。ハーレーの勢いに陰りが見えていた時代に登場したのが”エボリューション(革新)”エンジンです。

これまでの主要のエンジンであったパンヘッド、ショベルヘッドのように、OHVや1カム構造などの伝統を守りながらも、コンピュータ設計、クランク・ブロックのスタッドボルト改良、アルミ素材の採用などによって、放熱性に優れ耐久性が飛躍的にアップ。出力の向上のためにも余力が残されている高性能エンジンとなっています。

個性的だったヘッド・バルブカバーの部分は四角い形となり、これ以降のエンジンと似ているデザインとなっていますが、エボリューションはここが3分割されています。遠目ではわからないかもしれませんが、見分ける際は近づいてみてください。

エボリューション

ツインカム(1999~2017)

数々の改良によって性能が大きく向上したエボリューションでしたが、アメリカの速度規制が55mph(約90km/h)へ65~75mph(100~120km/h)へと緩和。これを受け、さらなるパワーアップを狙って登場したのがこの”ツインカム”です。

より正確なバルブ開閉を行うため、気筒ごとにカムを配置。計2本となったカムシャフトからツインカムと呼ばれることとなりました。
しかし通常想像するようなシリンダーヘッドのカムシャフトが2本あるような構造ではなく、ハーレー伝統のOHVのままカムシャフトを2本にしています。

また、シリンダーフィンの表面積を増やし冷却効率を約50%ほどアップ、排気バルブの小径化や完全燃焼を図るコンバスチョン技術と細かい点火時期制御で厳しい排気ガス規制にもクリアできるように進化しています。

見分けるポイントはエボリューションと同じくバルブカバー。先代では、3分割となっていたカバーですがツインカムでは2分割となっていますのでここで見分けましょう。

ツインカム

ミルウォーキーエイト(2017~)

2017年から登場した、ハーレー新設計の高性能エンジンで、ツーリングモデルから始まり祖父ている系統にも搭載され始めています。

最も大きく変わったのはバルブとスパークプラグの数です。バルブは吸排気ともに1気筒当たり4本に。計8本となったことが”ミルウォーキーエイト”の由来になったようです。スパークプラグも1気筒当たり2本になり燃焼効率が向上しました。

さらに、ラバーマウントによる振動の低減、排気温度の低下、触媒の大型化、トルクの10%増加など、多くのファンにインタビューをしてより乗り心地のよいエンジンとなりました。

バルブが4本となったことで、ヘッド周りが大型化。これにより、バルブカバーに2つのこぶが出現したので、ここをポイントに見分けてみてください。

ミルウォーキーエイト

レボリューション(2001~)

何十年もかたくなにOHV空冷Vツインを守り抜いてきたハーレーが開発したDOHC水冷Vツインモデルがこの”レボリューション”エンジンです。2021年にはこのエンジンの次世代版ともいえる”レボリューションマックス”が登場しました。

カムシャフトをヘッドに配置し、バルブとの距離を短くし、さらに可変バルブ機構を取り入れたことで燃焼効率が向上。レボリューションマックスは、ボア105㎜、ストローク72㎜のショートストロークとなり高回転型となっています。

見た目は水冷式となったことで、冷却用のフィンが無くなりスリムでのっぺりした外観に。また、冷却水を冷やすためのラジエーターがエンジン前部に取り付けられています

レボリューション

楽しみが広がる

ハーレーの主要なエンジンの特徴と見分け方を紹介してみましたがいかがでしたでしょうか?

どのエンジンにも個性があり、それぞれに熱狂的なファンがいるかと思います。見分けることができるようになったら「あ、あれは○○だな」とちょっと得意げになったり、会話がはずんだりするかもしれません。

少しでも参考になったら幸いです。

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